コラム
2025年6月26日
凍結療法とはどんな治療法?犬・猫のできものを麻酔なしで治療!

皆さん、凍結療法って聞いたことがありますか?
「うちの子の鼻の先に、小さいイボのようなものができた。気になるので取ってあげたい」
愛犬家の皆さん、愛猫家の皆さん、こんな経験ありませんか?
「イボは取ってあげたいけど、手術をするのは抵抗がある」
このような飼い主さんもきっと多いと思います。
そんなときに用いられる治療のひとつが「凍結療法」なのです。
簡単にいえば、患部にドライアイスのようなものを吹きかけて、イボを壊死させて取るという治療の方法です。
犬や猫の治療法のひとつですが、ここでは、気になる凍結療法について解説していきます。
目次
凍結療法とは?
凍結療法とは、その名の通り
冷たいガスを処置したい患部へ噴射し幹部組織を凍結させることにより、細胞の凍傷壊死を引き起こすことにより治療する方法です。
患部へ噴射するガスは、−89度ものとても冷たい液化亜酸化窒素です。
私たち人間にも用いられている凍結療法ですが、皆さんに馴染みがあるのは、イボの除去などの際の治療ではないでしょうか。
イボなどの幹部を凍結させることにより自然脱落させるという治療法です。
凍結療法のメリットとは?
凍結療法のメリットは、大きく2つあります。
- 麻酔をする必要がないという点
- 短時間でできるという点
凍結療法は、麻酔をして皮膚を切ったりすることなく、イボを除去することが可能であるため、出血することもありません。
においも痛みもほとんどないため、犬や猫にも安心して用いることができる治療法です。
凍結療法が用いられる病気?用いられない病気?
まずは、凍結療法を用いることができる病気についてご紹介しましょう。
- イボなどのできもの
- 肛門周辺腺腫
- 体の表面や眼瞼に出来た小さな良性の腫瘍
- 診断のついた限局性の腫瘍病変
これらの治療に凍結療法は用いられます。
一方、凍結療法が適応しない病気もあります。
- 悪性腫瘍の疑いがある腫瘤
- 手術が可能な大型腫瘤
これらの治療には、残念ながら凍結療法を用いることはできません。
凍結療法の治療期間と経過観察について
凍結療法については、必ずしも1回で治療が完了するというわけではありません。
1回目の噴射のあと、2週間後に再診が必要です。
2週間後の再診で、腫瘤がまだあるようであれば再度、噴射が必要です。
これを平均2回~3回繰り返すことで、次第に目立たなくなります。
液化亜酸化窒素を噴射したあとは、イボは浮腫という水膨れのような状態になります。
そのあと、浮腫が引いてくると、次に表面にカサブタができます。
7日~14日ほどするとカサブタが自然に取れると、イボが小さくなっています。
これを何度か繰り返すと、イボが取れるのです。
凍結療法のデメリットとは?
ここまで読んでいただいた皆さまは、「凍結療法、最高じゃん!」と思うかもしれません。
しかしながら、凍結療法にも注意すべき点があります。
まれに、凍結療法をした数日後に、患部が赤くなるケースがあります。
これは、患部が炎症を起こしている状態です。
大抵の場合、1週間ほどで赤みは取れますが、多くの場合、4日~5日続きます。
4日~5日続いたあと、赤みが取れればOKですが、1週間経っても赤みが取れない場合は、動物病院での受診をおすすめします。
凍結療法の治療費は?
犬や猫に負担をかけない治療法である凍結療法。
「負担が少ない分、料金が高いのでは?」と治療費を心配する飼い主さんもいらっしゃるでしょう。
動物病院によっても治療費は異なりますが、目安としては1回1万円程度です。
手術に比べると、かなり安いといえます。
まとめ
冷却媒体の液化ガスをイボなどの患部組織に直接吹きかけることにより、患部組織を瞬間的に凍結させ、体温で溶けたらまた凍結させる・・・
急速な凍結と緩徐な融解を繰り返すことによって、イボなどの患部組織を破壊する「凍結療法」。
「患部を切らないため、痛みはないと言いつつ、実は痛みを伴うのでは?」
このように、愛犬や愛猫への負担が気になる飼い主さんもいらっしゃるでしょうが、凍結療法に痛みはほとんど伴いません。
痛みがほとんどなく、出血もないため、麻酔の必要もありません。
老犬であったり、全身麻酔をすることにより体への負担やリスクが気になる場合には、凍結療法は、かなり有効な治療法だといえます。
またピンポイントで患部に照射するため、正常な組織まで壊死したり、損傷するというリスクも伴いません。
かなり安全性の高い治療法だといえます。
手術の場合、手術時間に時間がかかるうえ、術後の入院なども必要になりますが、凍結療法の場合には、短時間で治療が終わり、そのうえ入院も不要です。
手術より安価であるという点も魅力的です。
愛犬や愛猫の体へのリスクを考えると、麻酔をかけての手術よりも安心です。
ただし、凍結療法は、皮膚の表面に飛び出しているイボや良性の腫瘤に限り有効な治療法です。
皮内や皮下にある腫瘤に対しては効果がありません。
愛犬や愛猫に、気になるイボや腫瘤がある場合、手術で取り除くという治療法のほかに、凍結療法という選択肢もあるということをぜひ知っておけば、もし愛犬や愛猫のイボや腫瘤の除去の際に、できるだけ愛犬や愛猫に負担をかけずに治してあげることができますよね。