夏の暑さ対策として欠かせないエアコン。
しかし人間と同じように、猫にとっても涼しい環境は快適な一方で、冷えすぎや温度差によって体調を崩すことがあります。
一般的に「クーラー病」と呼ばれる状態は、人間だけでなく猫にも見られ、咳やくしゃみ、自律神経の乱れによる不調、さらには腹痛や下痢・嘔吐といった消化器症状を引き起こすことがあります。
ここでは、猫のクーラー病について症状別に分けて詳しくご紹介します。
咳やくしゃみが出る症状
エアコンを使うことで、室内の空気は乾燥しやすくなります。
猫の呼吸器は人間よりも繊細です。
乾燥した冷たい空気を吸い続けることで、喉や鼻の粘膜が刺激を受け、咳やくしゃみが出やすくなります。
また、冷気が直接猫の体に当たると、体温が急激に奪われて免疫力が低下し、風邪に似た症状を起こす場合があります。
特に子猫や高齢猫、慢性の呼吸器疾患を持っている猫は、クーラー病による影響を受けやすいため、注意が必要です。
エアコンの内部にカビやホコリが溜まっている場合、それが吹き出し口から放出されることで、アレルギー反応を引き起こし、くしゃみや鼻水が長引くことがあります。
私たち人間にもこれによく似た現象があります。
「ハウスダストアレルギー」です。
対策について
猫が頻繁に咳やくしゃみをするようになったら、単なる夏風邪ではなくクーラー病の可能性も考えましょう。
部屋の温度管理を見直すと同時に、エアコンフィルターを清掃したり、加湿対策も行なうことをおすすめします。
自律神経の乱れからくる体調不良

猫の体は本来、外気温に合わせて体温を調整する能力を持っています。
しかし、冷房の効いた室内と蒸し暑い屋外を行き来することで、急激な温度差にさらされると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
症状について
- 食欲がない
- 元気がなく寝てばかりいる
- なんとなく落ち着きがない
- 呼吸が浅く速い
このような症状が見られたら、クーラー病の可能性があります。
猫は、環境の変化に敏感です。
人間よりも自律神経の乱れを体調に反映しやすい傾向にあります。
冷えによる血流の悪化も加わり、筋肉がこわばったり関節の動きが鈍くなったりすることもあるので注意が必要です。
また、夜間にクーラーをかけっぱなしにすると、猫の体が必要以上に冷えてしまい、体温調整機能に負担をかける原因となります。
私たち人間も「なんとなく体がだるい」といった症状になることがありますよね。
それと同じ現象が猫にも起こるため、それにより元気がない、食欲がないといった症状を引き起こします。
どうやって予防する?
室温を25~28℃程度に保ち、直接冷風が当たらない場所に猫の寝床を設置するようにしましょう。
また、冷えすぎたときに猫が自ら避難できるよう、涼しい場所と暖かい場所を猫が自由に行き来できるような環境を整えることも効果的です。
腹痛、下痢、嘔吐
クーラー病の代表的な症状のひとつに消化器系のトラブルが挙げられます。
体が冷えることで腸の働きが鈍くなり、消化不良を起こしやすくなるのです。
特にお腹が冷えると、腹痛や下痢、さらには嘔吐が見られる場合があります。
また、冷たい空気によって自律神経が乱れると、胃腸の働きが不安定になります。
これにより、便の状態が急に柔らかくなったり、吐き戻しが増えることがあります。
私たち人間も「夏バテ」になったときに、胃腸の働きが低下しますよね。
それと同じメカニズムです。
また、飲み水を一気に飲んだり、冷たい床に直接寝転んだりすることも腹部の冷えにつながります。
特に短毛種やお腹の毛が薄い猫は、直接的に冷えの影響を受けやすいため注意が必要です。
下痢や嘔吐が一時的なものであれば、軽度のクーラー病と考えられます。
ただし、下痢や嘔吐が繰り返し続く場合には、脱水症状のリスクが高まります。
猫はもともと水分をあまり摂らない動物です。
そのうえ、嘔吐や下痢によって体内の水分や電解質が失われると、命に関わることもあります。
下痢や嘔吐の症状が長引いている場合は、迷わず動物病院を受診するようにしましょう。
まとめ
猫のクーラー病は、飼い主さんも何となく「大丈夫だろう」と軽く見過ごしがちです。
しかしながら、クーラー病には、3つのおもな症状があります。
- 咳やくしゃみなどの呼吸器症状
- 自律神経の乱れによる不調
- 腹痛や下痢・嘔吐といった消化器症状
などです。
これにより体調に幅広い影響を及ぼします。
特に子猫やシニア猫、持病を持つ猫の場合は症状が重く出やすいため、飼い主さんがクーラー病になりにくい過ごしやすい環境を整えてあげることが大切です。
- 室温は25~28℃を目安に設定
- 冷風が直接当たらないように工夫
- 避難できる「涼しい場所」と「暖かい場所」を両方用意
- 水分補給をサポートし、体調に異変があれば早めに受診
エアコンは夏場の必需品です。
特に近年は、エアコンがなければ危険な暑さです。
エアコンの正しい使い方を心がけることで、愛猫の健康を守りつつ、愛猫が快適に過ごすことができます。
愛猫のために、エアコンの正しい使い方とクーラー病についての知識を深め、可愛い愛猫がクーラー病にならないように対策を取って暑い夏を乗り切ってくださいね。
この記事の監修者
獣医師 田中 浩二
パール犬猫病院 院長
名古屋市緑区の動物病院です。
治らない病気、死を避けることができない病気に関しても「治らないから…」で片づけてしまうのではなく、可能な限り痛みを緩和したり、悪心を抑えたりして、看取る飼い主様が最後の時間を大切に・有意義になるように お手伝いいたします。